少年漫画の主人公は、たいてい明確な目標を持っています。
ナルトは火影になることを夢見て、ルフィはひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を探しに海へ出ます。
読者はその目標にどれだけ近づいたかを追いながら物語を読みます。
ところが『HUNTER×HUNTER』は、少し変わった漫画です。
ゴンの目標は、確かに最初から明確です。
「父・ジンに会う」。
しかし読者は、いつの間にかその事実を忘れてしまいます。
いや、正確には、忘れてもかまわなくなるのです。
なぜならこの漫画は、目的地よりもそこへ向かう過程そのものがあまりに楽しいからです。
ハンター(Hunter)という言葉で大事なのは目標ではない
私たちはよく、Hunterという言葉からまず「獲物」を思い浮かべます。
何か目標があり、それを手に入れるために動く人。
しかし『HUNTER×HUNTER』が本当に強調しているのは目標ではなく、動詞のほうです。
Hunt。
何かを追い、探検し、発見し、没頭する行為そのもの。
だから作中のハンターたちは、結果よりも過程の近くに立っています。
遺跡ハンターは遺物を手に入れる瞬間より未知の場所を探検する時間を愛し、ビーストハンターは珍しい生物を手にする結果よりそれを追跡する過程に魅了されます。
そしてその哲学の中心に、ジン=フリークスがいます。
ハンター試験編の本当の報酬はライセンスではなかった
ゴンは父を探すために旅に出ましたが、実は旅の間ずっと父に近づいていません。
その代わり、数え切れないものに出会います。
念を学び、強い相手と戦い、見知らぬ世界を探検し、無謀な選択を繰り返し、そして何より、キルアに出会います。
ハンター試験編が良い例です。
表面的には、あの試験の最終報酬はハンターライセンスです。世界のどこへでも行けて、莫大な権限と富を保証する資格。
しかし物語が終わった後、ゴンに残った最も大切な成果はライセンスではありません。
キルアという友だちです。
試験の目的は合格でしたが、読者の記憶に残るのは、二人が一緒に駆け回り、ふざけ合い、互いを救う瞬間です。
結局ゴンは、「ハンターになったこと」より大きなものを手に入れます。
一緒に旅をする人。
そしてその構造は、ジン=フリークスの物語と正確につながっています。
ジン=フリークスが本当に好きだったのは発見ではなく人だった
ジンは世界各地の遺跡を発掘した伝説的なハンターです。
しかし彼が最も大切そうに語る瞬間は、偉大な発見の瞬間ではありません。
仲間と握手する瞬間です。
一緒に探検を終え、一緒に道に迷い、一緒に何かを見つけ出した末に、互いを見つめ合う瞬間。
結局ジンもまた、結果より旅路の中の人々をより愛していたわけです。
だから『HUNTER×HUNTER』のあの最後のセリフは、単なる名言ではなく、作品全体を貫く結論のように聞こえます。
「道草を楽しめ 大いにな ほしいものより大切なものがきっとそっちにころがってる」
この言葉は単なる人生のアドバイスではありません。
『HUNTER×HUNTER』という作品そのものです。
ゴンとジンの再会が意外にも淡々としていた理由
興味深いのは、『HUNTER×HUNTER』は実はすでに一度完結できた作品だという点です。
ゴンは結局ジンに会います。
普通の少年漫画なら、最大のカタルシスが爆発すべき瞬間です。
数百話にわたって追いかけてきた目標。主人公の旅が完成する場面。読者が待ち望んできた最終報酬。
しかし『HUNTER×HUNTER』は、その瞬間を驚くほど淡々と通り過ぎます。
二人の再会は、運命的な演出でも、巨大な感情の爆発でもありません。
むしろ少し拍子抜けするほど偶然に、すれ違うように演出されます。
だから一部の読者は、この場面を見て気が抜けたと言いもしました。
しかし不思議なことに、大半の読者はそこで本当の終わりを感じませんでした。
むしろその次に登場した「暗黒大陸」を見て、まずこう思うのです。
「わあ、これからも読めるHUNTER×HUNTERがものすごくたくさんあるんだな」。
その感情が大事です。
普通の少年漫画なら、目標を達成した瞬間に物語は終わります。
しかし『HUNTER×HUNTER』は、目標を叶えたのに終わりません。
なぜならそもそもこの漫画は、目的の達成そのものより、その過程で出会う未知と探検と回り道をより大切にする作品だからです。
だからHUNTER×HUNTERは「人生の漫画」になる
実際、日本では『HUNTER×HUNTER』を単なるバトル漫画ではなく「人生の漫画」として挙げる反応を、難なく見かけることができます。
もちろん緻密な設定やキャラクターの魅力のせいでもあるでしょうが、多くの読者がこの作品を特別に記憶している理由は少し違います。
『HUNTER×HUNTER』は常に、結果より過程を長く見せます。
誰が勝ったかより、なぜ戦うのかを見せ、目標を達成する瞬間より、そこまで迷いながら歩んできた時間をより大切に扱います。
だから読者はいつしか気づくのです。
私たちが本当に好きだったのは「ジンに会う結末」ではなく、そこへ向かう果てしない旅路だったのだと。
天空闘技場で念を学んでいた時間、ヨークシンで仲間たちと絡み合った瞬間、グリードアイランドを探検していた感覚、キメラ=アント編で人間性と絶望に向き合った経験。
そのすべての「寄り道」が、結局『HUNTER×HUNTER』の本編だったのです。
私たちの人生もそうです。
いつも何かの目標に向かって走っています。
良い大学、良い職場、成功、お金、夢。
しかし時間が経って振り返ると、本当に長く記憶に残るのは目的地そのものではありません。
一緒に歩いた人、道に迷った時間、無駄に見えた回り道、思いがけず出会った縁。
『HUNTER×HUNTER』は、それを語る漫画です。
目標を叶える物語というより、目標を忘れるほど過程に夢中になる物語。
そしておそらくだからこそ、今でも数多くの人がこの作品を単なる名作少年漫画としてではなく、自分の人生に似た「人生の漫画」として記憶しているのかもしれません。
まるでジン=フリークスのあの言葉のように。
「道草を楽しめ 大いにな ほしいものより大切なものがきっとそっちにころがってる」