マーケティングを始めたばかりの頃、いわゆる「イケてる」ブランドのSNSアカウントを見て不思議に思ったことがあります。意外にもフィードがきれいに整っていなかったからです。
そこには生のままの写真や動画、構図のぎこちないコンテンツ、さらには「え?これを見てそんなことを思ったの?」と言いたくなるほど突拍子もない反応があふれていました。
供給者のマインドに囚われていた頃は、それらを磨き、整理したいという強い誘惑を感じました。ブランドのアイデンティティを損なうノイズのように見えたからです。
今は考えが変わりました。
無秩序な「UGCの堆積岩」こそが、現代のブランドマーケティングが到達できる最も成功した姿です。
今のブランドマーケティングは、「供給者が何を語るか」より「それを見た人々がどう反応し、どう変奏するか」によって成否が分かれます。
企業だけがブランドを作れた過去とは違い、誰もがメディアになれる今は、ブランドの所有権が企業から大衆へと完全に移ってきました。
かつては多くの資源を投入して一貫したメッセージを継続的に注入することがブランディングの基本でした。しかし今は違います。大げさなメッセージを投げる前に、世の中から**「こういうメッセージを送ってもいいか許可を得る過程」**が欠かせません。
投げた小石が市場でどんな波紋を起こすかを見守り、その波紋に身を任せなければならないのです。
ブランドはもはや、工場で滑らかに射出成形されるプラスチックではなく、数多くの人々の反応と経験が幾重にも積み重なってできる巨大な堆積岩だからです。
人々がそれぞれのやり方で積み上げていける、堅固な地層を敷いてあげること。それが今どきのブランドマーケティングです。