ここでいうVOCは揮発性有機化合物ではなく、顧客の声(Voice of Customer)です。問い合わせ記録、レビュー、アンケート、SNSやショート動画の中にある顧客の言葉を集めて読み、その中から自社が変えるべきことを見つける仕事です。
ところが、VOC分析レポートを受け取ってみると、たいてい似たり寄ったりです。ポジティブ78%、ネガティブ22%、頻出単語のワードクラウド、そして「全体的に反応は良好です」。読み終えるとうなずきはするものの、来週何をすべきかは残りません。
結論から
良いVOC分析レポートは、顧客が何を言ったか ではなく だから何を変えるのか を1枚で示します。順序は、結論1行 → 根拠(属性別の数値と顧客の原文)→ やることです。この記事では、VOCを集め、分け、報告する5つのステップと、すぐ使える1枚テンプレートをお渡しします。
VOCはどこにあるのか
VOCは社内と社外に分かれています。片方だけ見ると結論が偏ります。
| 区分 | どこにあるか | よく見えるもの | 見落としやすいもの |
|---|---|---|---|
| 社内 | CS問い合わせ、返品・交換理由、アンケート回答 | 利用中の問題、不満の強さ | 静かに離れた顧客、購入前のためらい |
| 社外 | ECレビュー、コミュニティの投稿 | 購入理由、競合製品との比較 | 動画でしか残されていない感想 |
| 社外(動画) | TikTok・リール・ショート動画のレビュー | 実際の使用シーン、第一印象、バイラルポイント | ハッシュタグなしで口頭だけで言及された製品 |
ある顧客企業のマーケティングコミュニケーション部門長は、社内VOCに外部レビュー・コミュニティを合わせて見たところ、紙おむつ・女性用品の主要な不満と改善の優先順位が一目で整理され、センシティブな製品のリスクに先に対応できたと述べています(Synclyの顧客事例)。
VOC分析の5ステップ
- 決めるべき問いを定めます。 「VOCを分析する」ではなく、「次のリニューアルで何を先に直すか」「今回のキャンペーンメッセージは顧客に届いたか」のように、問い1つに絞ります。レポートの最初の1行がこの問いの答えになります。
- 集めて、ふるいにかけます。 問いに合ったチャネルと期間を決めて集めます。広告・モニター投稿、同名の別製品、無関係な言及はこの段階で除いておかないと、後の数字が信頼できなくなります。
- 属性ごとに分けます。 使用感・効果・香り・価格・パッケージ・配送のように、カテゴリーに合った属性を決め、1件のレビューを属性単位に分解します。「香りは良いけど量が少ない」は、香り(+)と容量(−)という2つの発言です。文章を意味単位に分けて感情を見る方式を「属性ベースの感情分析」と呼び、LG電子もこの方式でレビューを分析しました(Synclyブログ)。
- 優先順位を付けます。 多く出た不満がいつも最優先とは限りません。どれくらい頻繁に出るか、どれくらい深刻か(返金・再購入の断念につながるか)、前回より増えたかを合わせて見ます。件数は少なくても、急に増えた不満が最も急ぎであることが多いものです。
- 原文を添えて報告します。 「香りの不満が2倍に増えた」の横に、顧客の言葉を2〜3行添えてください。数字は疑われても、顧客の文章は会議室の空気を変えます。
すぐ使える1枚テンプレート

| 順序 | 項目 | 入れる内容 |
|---|---|---|
| 1 | 1行の結論とやること | 「リニューアルで香りを先に変える」+担当+期限 |
| 2 | 分析範囲 | 問い、チャネル、期間、件数、比較対象 |
| 3 | 主要な発見3つ | 属性別の称賛・不満の数値+顧客の原文を1〜2行ずつ |
| 4 | 前回との変化 | 新たに増えた不満、減った不満 |
| 5 | 付録:元データ | 次の四半期に同じ基準でもう一度比較できるように |
主要な発見は3つを超えないほうがよいです。7つ書くと何も変わりません。
よくある失敗4つ
- 星評価の平均だけを見る。 4.6点は何も教えてくれません。4点のレビューの中に最も重要な不満が隠れていることがよくあります。
- ポジティブ・ネガティブの比率で終える。 「ポジティブ82%」はレポートの結論にはなりません。何に対してポジティブなのか、ネガティブの18%がどこに集中しているのかが結論です。
- 原文なしで数字だけ出す。 数字だけのレポートは、「サンプルがおかしいんじゃない?」の一言で崩れます。
- 毎回基準が変わる。 属性の分類と期間が毎月違えば、変化を見ることができません。最初のレポートの分類をそのまま使い、元データを残しておいてください。
自分でやるか、任せるか
レビューが数百件で、韓国国内のチャネルが1〜2か所なら、Excelで自分でやっても十分です。ChatGPTのようなAIにレビューを貼り付ければ方向性は早くつかめますが、入れたレビューしか見られず、原文をたどり直しにくいという限界があります。
レビューが数千件を超えたり、ショート動画のレビューや海外の反応まで一緒に見る必要があったりするなら、ツールや外注を検討するタイミングです。Synclyは問い合わせ・アンケートのような社内VOCと、ECレビュー、TikTok・リール動画の中の発言を一か所に集めて分析し、リサーチパートナーズは専任コンサルタントが問いの定義からレポートまで作成し、元データとともに納品します。どちらが合うかは、コスト構造を先に見てから判断するのがよいでしょう。
アルパカのまとめ
VOC分析のゴールはレポートではなく、レポートが生んだ決定1つです。今月は上のテンプレートで、問い1つ、主要な発見3つだけを埋めてみてください。来月同じテンプレートでもう一度書けば、そのときからVOCは「反応の整理」ではなく「変化の追跡」になります。
🦙 リサーチャー・アルパカの調査ノートでした。間違っている内容やもっと知りたい点があれば、下の「Joshに連絡する」からお知らせください。次の調査に反映します。
出典
- Syncly リサーチパートナーズ — 社内VOCと外部レビューの統合分析の顧客事例、成果物
- LG電子の事例(Synclyブログ) — 属性ベースの感情分析
- Syncly ホームページ — Syncly VOC:顧客フィードバックの統合